「空中の本へ」をテーマに、
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crystal cage 叢書のサイクル

photo : Taiga Hirabayashi

crystal cage 叢書は、Tokyo Publishing House の
横田茂と平出隆のあいだで20余年にわたって温められ、
ようやく2012年秋に創刊されたシリーズです。
その特徴は、印刷所を経ず、高性能インクジェット・プリンタを用いて、
企画、編集、組版、装幀、印刷、流通までのすべてを
刊行者サイドで行うというもの、
また、複数の書目を1冊であるかのように製本するというものです。
実際には平出隆の指導する多摩美術大学芸術学科の学生が
印刷を担当、これまでの10冊の全ページが研究室と個人の家で
刷り上げられました。唯一の外注先は製本所ですが、そこにも
卒業生が入社し、いまでは一級製本技能士にまでなっています。
平出隆の大学退職に伴い、同叢書は残すところ、
『葉書でドナルド・エヴァンズに』の「II」と「III」のみになりました。
最新刊は叢書の象徴ともいえる
ジョゼフ・コーネルの crystal cage をめぐる次の本です。



[平出隆総譜-造本]2012-10-21 crystal cage 叢書として独自の刊行システムを考案してすべての制作過程を指揮、横田茂のTokyo Publishing House から創刊。[d7]


『草本叙説』03 澤直哉 +〔平出隆〕

photo : Satoshi Sugitani

 前略 北国の子供はオトシブミの揺籃を、森のなかと本のなかで知ったとのこと。どちらが先かは知れません。ただ、この名の由来の「落文」を字引きに尋ねたのは後年のことで、新緑の葉書を巻く切なる思いは、まず虫類の、次いで個人のものと解されたそうです。種を植えるその文書の手厚さが、巧みに葉を截り脈を裁ち、翻して巻く酷薄の折り重ねであることが驚異なのだといいます。

〔岩田久二雄「オトシブミの揺籃をつくる方法」(昭和10年)は、葉を裁つ、産みつけながら巻き上げる、封印する、落とすという作業工程を、観察する、記録する、時を選んで介入する、書きあげる、刊行するという連鎖に変換して、オトシブミの行為に劣らぬ精密さになりました。つまり、オトシブミが書いたもの、ともいえますか。〕

 極めつけは、緻密に制御されていた暴力が溢れて零れる、火つけ予告の捨文のように凶悪な切断と落下である、と。それでいまも火種を葉に巻き、煙を吸って吐いては眺め、自然の incunabula に焦がれるのだとか。 草々
 S〔H〕S



air language newsbullet   n°009
by
Institute for Air Language



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